千葉県のオランダ家のフランス菓子*1

バイト先でおやつに頂いたお菓子のパッケージにピンときたの巻。

 千葉県では誰もが一度は口にしたことのある(と思う)、オランダ家の落花生を使った「楽花生ダクワース」というお菓子です。オランダ家のお菓子は、千葉県色を全面に出したお菓子がいくつかありまして、千葉県民のちょっとした贈り物には採用頻度が高い*1のです。他の千葉菓子(!)としては、「楽花生パイ」「千葉ミルフィー*2」などがありますが、わたしは別にオランダ家の回し者ではありません。今回はこのお菓子のパッケージに使われている書体について、ちょっと調べてみましたって話です。


 中身が入っていると文字をちゃんと写せないから、食べちゃいましたけど。パッケージの「Dacquoise」の文字がブラックレターですよ! 漢字の「楽花生(たぶんロゴ)」もブラックレター風にデザインされてます!「伝統に則った、正当なものですよー」な雰囲気を出してるねぇ。金文字の「Gâteaux Français â la Manière de Chiba.*3」は Copperplate Gothic(またはこれのサンセリフ体「Engravers' Gothic」か。セリフが見えないのは印刷のせい?)で高級感を演出しております。

 わたし、こういうクラシックな書体、好きです。古くからある活字の書体=うちにもある活版欧文書体に関係するものですからね。特に最近敏感になっているのはブラックレター。近年ではゴスロリ方面とか某人気マンガ「○EATH ○OTE」方面とかで使われてますけど、ブラックレターを適切に使っているというか、よく考えて使ってるなっていうデザインにはピンときちゃいますね*4。うちにあるのは Old English ですが、この「Dacquoise」は違うみたいだなあということで、この前ここで書いたidentifont.comで書体名を調べてみました。
 結果はこれ↓「Goudy Text」っぽい。


 でもなんかおかしいのよね。パッケージの文字はもっとこう、引き延ばされているというか、縦横比が狂ってるというか。で、Goudy Text に合わせてパッケージ画像を変形してみたのがこれ↓。

 大文字と小文字で引き延ばし比率が違ってる! 大文字は横幅約7割、小文字は半分の大きさが本来のプロポーションみたい。あと「i」の点がデカいっつか、太ってるみたいだ。もしかして「楽」の点と統一感を持たせようとしたのかな? このパッケージ作ったデザイナーさん、よくここまで手を入れたねぇ。いや、このくらいのカスタマイズは、デザインの世界では良くあることなのかしらん? 


 もともとブラックレターは聖書を印刷するために開発された書体。しかも「Goudy Text」は「Based on GutenbergÕs 42-line bible.*5」と説明がついています。限られた紙面にめいっぱい情報を詰め込めるように、文字のプロポーションを縦長に、手書きされた写本を元に設計されたということです。活字の場合の基本はベタ組み、インテルやワードスペースをできるかぎり少なくする本文組みというのが本来のブラックレターの姿です。
 しかしお菓子のパッケージにはそんな組み方は適さないから、一文字一文字のスペーシングを広くとって、それに似合うように文字そのものも横に拡大、小文字はひときわ細長いからもっと拡大……という作業過程が手に取るように分かります、ウンウン、がんばったねぇ、こんなに一生懸命考え(妄想中なので省略)。


 ということで、今回は Goudy Text と千葉県のマックスコーヒー的存在のお菓子をご紹介しましたー。予想外に長文になってしまってスミマセン。

*1:近年は某シャ○レー○に押されてきているが、古いなじみの店を利用しがちな地元民には依然人気。

*2:フランス語でmille feuill、千枚の葉(つか千葉!)の意。パイ生地の層がたくさんの葉を重ねたようにみえることから、パイ生地を使ったお菓子の名に。

*3:千葉風フランス菓子の意

*4:ブラックレターや Futura に関して、ナチス方面のゴタゴタがあるという話は、今回は省きます

*5:活版印刷界の祖、グーテンベルク42行聖書に基づいた書体